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いじめられた女子高生
(5)
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投稿:Room Shoes 様

第五章

「・・・はい、じゃこのページから、鈴木さん、立って読んでみて」

 ひとみは、先生の声で、現実に引き戻された。
 指名された鈴木和美が、とてもきれいな英語で読み上げ始めた。
 いじめているときの和美とのギャップを、ひとみは感じざるを得なかった。

 今思えば、あのときの「同意」が、何をされても黙って耐えるしかない状況を作り出したのだと、ひとみはつくづく感じていた。
 ただ、あのとき「同意」していなかったら?・・・

 彼女たちは、本当にトイレに行かせてくれなかっただろう。
 授業が始まり、皆の前で先生に「トイレに行かせてください」とはとても言えないのを彼女たちは十分承知の上で。
 そして、その授業中に我慢は限界を迎えて・・・

 そう思うと、あの選択は正しかったとひとみは自分に言い聞かせた。

 ひとみが、里美たち三人に逆らわないと誓った次の日の朝、ひとみは自分の靴箱の前で呆然と立ちつくした。
 ひとみの上履きが、片方だけ無くなっていたのだ。
 ひとみは、誰の仕業かすぐに分かったが、探そうともせず、先生に相談しようともしなかった。
 そのままローファーを靴箱の中にしまい、白いソックスのままで、教室に向かって歩き始めるしかなかった。

「・・・もしツゲ口したら、本当にトイレに行かさないからね」

「同意」したあの日のトイレでの出来事。
 里美たちから解放されてトイレの個室に向かおうとするひとみに対して、背中から里美のドスの聞いた声がした。
 この声を思い出すたび、ひとみは上履きを隠されて恥ずかしい思いをしても、我慢することにした。

「・・・はい、これで今日の授業を終わりにします」

 先生の声で、我に返ったひとみは、日直の号令にあわせて席を立ち、礼をした。


 昼休み、五時限目、六時限目と、ひとみにとって何事も無く過ぎていった。
 日常の風景。
 ただ、ひとみの足元だけを除いては。

 下校前のホームルームでも、担任の先生に、その足元を気がつかれなかったひとみは、内心安堵した。
 気がついてほしい、と思う反面、気がつかれたら何て言おうかと悩んでいた。

 ひとみは足早に教室を後にし、下駄箱に向かった。
 その途中、何人もの生徒に足元を見られて恥ずかしさを覚えたひとみは、恐る恐る自分の足元を見た。

 足の裏、白いソックスの裏は、土踏まずの部分を除いて真っ黒に汚れていた。
 ひとみは、足の裏の、ソックスの汚れを手で叩きながら、自分の靴箱に手をかけ、そして蓋を開けた。

「えっ!・・・」

 ひとみは思わず声を出した。
 その靴箱の中には、ひとみが今日自分で脱いで、その後行方不明になっていた上履きが置かれていた。
 その代わり、これから必要となる、通学用のローファーが、消えていた。

 上履きを手に取るひとみ。その上履きには、確かに自分の名前が書いてある。
 が、甲の部分にある上履きシューズのゴムバンドが切られて、靴の中敷にだらっと垂れていた。

 ひとみは、自分のローファーを探そうともせず、そのイタズラされた上履きに足を入れ、下駄箱を後にした。

 下校中の路上で、駅のホームで、電車の中で、ひとみは否応無く多数の視線を感じていた。
 自分の名前が書いてある、誰もが上履きとわかる靴を履いた、ひとみの足元。

 途中、ゴムが切られているせいで、何度も脱げそうになった。
 階段では実際に脱げて置き去りにしてしまい、帰宅ラッシュで込み合う中を、すみません、すみませんと掻き分けながら、その上履きを履きなおしに戻らなければならなかった。

 恥ずかしい。
 もう、嫌。

- つづく -


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